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毎日新聞に石川直樹展の特集面

特別展「石川直樹 この星の光の地図を写す」の開幕に合わせて、きょう(8日)の毎日新聞朝刊(西部版)にカラー特集面が掲載されました。
北九州市立美術館の山下理恵学芸員から寄稿していただきました。原稿は以下の通りです。

北極圏、南極大陸、世界第2位の高峰K2、「ポリネシア・トライアングル」と呼ばれる太平洋の広い海域に浮かぶ島々、世界各地に点在する先史時代の壁画群-、本日開幕する「石川直樹 この星の光の地図を写す」展の会場には、地球上のさまざまな場所の写真が並ぶ。これらは全て、写真家・石川直樹が自らの足で訪ね歩いた途方もない旅の軌跡である。

石川は1977年東京生まれ。22歳で北極から南極までを人力で踏破するプロジェクト「Pole to Pole 2000」に参加し、23歳で七大陸最高峰の登頂に成功するなど、水平方向だけでなく垂直方向へもカメラを携えて旅を重ねた。そして、人類学や民俗学などに関心を寄せつつ独自の視点から写真を撮り続けている。

石川の写真に対するスタンスは一貫している。「こう撮りたい」というイメージを持って被写体に向かうことはなく、記録性を重視し、何の偏見も衒いもなく、向かってきたものをキャッチするようにシャッターを切る。そうして、被写体のありのままの姿から立ち現われてくるものを通して、新しい世界の見方を提示してきた。

初期のシリーズ「POLAR」では、国という単位を超えて北極圏の広い地域で見られる、狩猟・漁労の形態や、神話、動物の解体作法といった共通性に着目し、北極圏に生きる人々の緩やかなネットワークを浮かび上がらせた。また、日本列島の南北に連なる島々を追う「ARCHIPELAGO」では、国境によって区切られた地図を自明のものとせず、島々の連なりから世界を捉えなおそうと試みている。

国境や辺境の意味を問い直すことで、世界は全く違った様相を見せる。極地や辺境の地に行くことだけが冒険ではない、と石川は言う。視点を少し変えるだけで、当たり前だと思っていた物事に疑問が生じる。それは、自分が今立っている世界を見つめ直すことであり、未知なる世界への冒険の始まりでもある。

本展では、石川の代表的シリーズを一堂に展示し、写真や映像、実際に遠征に使用してきた道具も含めて、彼のこれまでの活動を総合的に振り返る。また、北九州特別展示として、石川が2008年に撮影した北九州市内の写真も初公開する。

関連イベント「森下真樹 ベートーヴェン交響曲第5番『運命』全楽章を踊る」で、石川は振付に初挑戦している。時には自らの身体を限界まで駆使するような旅をしてきた石川と、身体であらゆるものを表現するダンサー、そして、ベートーヴェン「運命」第3楽章の低音から徐々にのぼりつめていくようなメロディーが出合ったとき、どんな化学反応が起こるのか。ぜひご覧いただきたい。(北九州市立美術館学芸員、山下理恵)